Web広告はWebマーケティングにおいて、SEO対策と並んでメジャーな施策です。短期間で成果が期待できる一方、手法ごとに料金体系や費用相場が異なるため、費用対効果の高い運用を行うためには、あらかじめ各手法の費用感について把握しておく必要があります。当記事ではWeb広告の料金体系や、各広告施策における費用相場を紹介します。迷いがちなWeb広告予算の設定方法についても解説しているので、気になる方はぜひご覧ください。Web広告の費用が決まる仕組みWeb広告は大きく分けて運用型広告と純広告の2種類に分類され、費用の決まり方に違いがあります。まず、リスティング広告やディスプレイ広告などの運用型広告の場合、キーワードごとに広告単価が設定されているのが特徴です。オークション制が採用されている場合、競合他社との入札状況によって単価が変動するため、人気のあるキーワードほど費用が高くなる傾向があります。一方、純広告では、掲載メディアの広告枠を一定期間買い取って広告を出稿するケースの他、広告を掲載する期間を基準にして費用を算出するケースや、PV数で費用を算出するケースなどがあります。他にも、アフィリエイト広告や記事広告など、独自の課金方式を採用している広告も多いです。以上のように、Web広告の費用が決まる仕組みは広告の種類によっても異なるので、それぞれの特性や料金体系を把握した上で、適切な手法を選ぶことが重要になります。Web広告の料金体系Web広告の主な料金体系は以下の通りです。クリック課金方式インプレッション課金方式インプレッション保証型方式エンゲージメント課金方式PV保証型課金方式掲載保証型課金方式期間保証型課金方式成果報酬型課金方式それぞれ詳しく見ていきましょう。クリック課金方式クリック課金方式は、広告がクリックされた回数に応じて費用が発生する方式です。広告表示そのものには費用がかからず、クリックされて初めて費用が発生するので、無駄なコストを抑えやすくなっています。ユーザーの関心が高いキーワードに対して出稿できるため費用対効果が高く、クリックしたユーザーの属性や、クリック後の行動履歴などを確認できるため、改善につなげやすいのがメリットです。リスティング広告やディスプレイ広告、SNS広告など、幅広いWeb広告で採用されています。インプレッション課金方式インプレッション課金方式は、広告が表示された回数に応じて費用が発生する課金方式です。一般的には1,000回表示ごとに課金される「CPM課金」が採用されています。また、動画広告の場合は動画再生されるたびに課金が発生する「CPV課金」が採用されるのが一般的です。クリックやコンバージョンに関係なく費用が発生するため、ブランド認知や認知拡大を目的とした広告に適しています。広告が視認される機会を重視する場合に活用されやすい方式です。一方で、インプレッション数単位で金額が固定されているため、少額からのスタートが難しい欠点があります。エンゲージメント課金方式エンゲージメント課金方式は、ユーザーが広告に対して事前に設定したアクションを取った際に費用が発生する課金方式です。具体的には動画の再生や画像の拡大、リンククリックなどを設定できます。特にインタラクティブな行動が発生しやすいSNS広告で採用されることが多く、ユーザーの関心度や、広告に対する印象を把握しやすいのが特徴です。認知向上と同時にユーザーとの接点を深めたい場合に効果的な課金方式です。インプレッション保証型方式インプレッション保証型方式は、広告の表示回数を事前に保証する課金方式です。設定したインプレッション数に達するまで広告が掲載され続ける点が特徴で、予算に応じたリーチ数が確保できます。そのため、ブランディングやキャンペーンの浸透を狙う場面で利用されることが多いです。主にYahoo!JAPANなども大手ポータルサイトやPV数の多いサイトの純広告で採用されていることが多く、計画的に広告を出稿できるのがメリットです。PV保証型課金方式PV保証型課金方式は、広告が掲載されたページの閲覧数(ページビュー)に対して課金される方式です。広告が確実にユーザーに表示される点はインプレッション保証型と似ていますが、ページ単位での閲覧に重きを置いています。特定のコンテンツ内に広告を掲載する際に活用される傾向がある他、コンテンツ自体が広告となっている記事広告で採用されることが多いです。掲載保証型課金方式掲載保証型課金方式は、一定の掲載枠を一定期間買い取る形で課金されます。月単位や週単位で広告枠が確保され、インプレッションやクリックに関係なく料金が発生するのが特徴です。ポータルサイトや情報サイトなどに掲載される記事広告で採用されることが多く、ブランドイメージの定着や認知拡大に効果的です。期間保証型課金方式期間保証型課金方式は、広告を掲載する期間を基準にして費用が発生します。広告がクリックされた回数や表示された回数に関係なく、あらかじめ決めた期間で料金が固定されます。認知度向上を狙ったキャンペーンや、安定した露出を求める広告主に向いています。メディアとの調整によって柔軟に掲載位置や枠が決まる点も特徴です。成果報酬型課金方式成果報酬型課金方式では、広告経由でのコンバージョン(購入や資料請求など)が発生した場合にのみ費用が発生します。アフィリエイト広告などで主に採用されており、リスクを抑えて広告運用を行いたい企業に人気です。広告費を成果ベースでコントロールできるため、確実な成果を求める場合に適した課金方式です。Web広告の種類と費用相場Web広告には、主に以下のような種類があります。リスティング広告ディスプレイ広告SNS広告動画広告記事広告アフィリエイト広告メルマガ広告それぞれの特徴や費用相場について詳しく解説します。リスティング広告リスティング広告は、GoogleやYahoo! JAPANなどの検索エンジンの検索結果に表示されるキーワード連動型広告です。ユーザーの検索意図に沿って表示されるため、比較的成果につながりやすくなっています。料金体系はクリック課金型が主流で、1クリックあたりの費用は100円〜数千円まで、キーワードの競合状況によって大きく変動します。特にBtoBや金融など、広告を出稿する競合が多い分野では単価が上がりやすい傾向があるので、費用対効果を高める難易度が高くなりがちです。ディスプレイ広告ディスプレイ広告は、Webサイトやアプリに画像やバナーを表示する形式です。ブランディングや認知度向上を目的とした広告に適しており、細かなターゲティング設定を行うことで幅広い層にアプローチできます。大きく4種類に分類され、それぞれ料金体系や費用相場が異なります。広告の種類特徴料金体系費用相場アドネットワーク広告複数のメディアを横断するアドネットワークを通じて掲載される広告インプレッション課金方式またはクリック課金方式・インプレッション1,000回あたり数十円〜数百円・1クリックあたり数十円〜数百円DSP広告複数のアドネットワークを通じて掲載される広告インプレッション課金方式・インプレッション1,000回あたり数十円~数百円リターゲティング広告自社サイトを訪れたことユーザーに再訪を促す広告インプレッション課金方式またはクリック課金方式・インプレッション1,000回あたり数十円〜数百円・1クリックあたり数十円〜数百円純広告サイトが用意した広告枠に掲載される広告期間保証型課金方式1週間あたり数十万~数百万円基本的にはクリック課金方式や「CPM課金」のインプレッション課金方式が採用されています。純広告についてはユーザー流入が多いサイトの広告枠に確実に広告を掲載できるため、大きな成果が望めますが、枠単位で買い取ることになる都合上、料金は割高です。SNS広告SNS広告は、FacebookやInstagram・X(旧Twitter)などのSNSプラットフォーム上で配信できる広告です。SNSごとにユーザー層が異なるため、適切なプラットフォームを選ぶだけである程度のターゲティングが可能な上、ユーザーの行動や発言内容などをもとに細かくターゲティング設定が可能なので、制度の高い広告配信が実現できます。課金方式はクリック課金やエンゲージメント課金が多く、1クリックあたりの相場は50円〜200円程度です。特に購買意欲の高い層に対してリーチしやすく、企業の商材や目的に応じて柔軟な運用がしやすくなっています。動画広告動画広告は、YouTubeをはじめとするプラットフォームで活用される動画形式の広告です。視覚と聴覚を介してインパクトを与えられるため訴求力が高く、ブランディングや認知度向上の用途でユーザーに強い印象を残せます。一方で、動画を制作する必要がある都合上、広告の出稿料以外にもコストがかかりやすいのがデメリットです。費用相場については、採用されている課金方式によって異なります。課金方式費用相場クリック課金方式1クリックあたり10円~数百円インプレッション課金方式1,000回あたり数百円視聴課金方式5秒以上の再生で1回あたり数円~10円基本的には、クリックというアクションが伴うクリック課金方式は、費用が高くなる傾向があります。対して、認知獲得に活用できるインプレッション課金方式や視聴課金方式では、広告単価が割安なので、多くのユーザーに広告を配信することが可能です。記事広告記事広告は、メディアサイトなどに自然な記事形式で掲載する広告手法です。一般的な広告と異なり、記事コンテンツと同じ形式になっているためユーザーに広告感を与えずに訴求できます。一方で、費用相場は1本あたり10万円〜50万円程度と、Web広告の中では割高です。基本的に、媒体の知名度やPV数が高いサイトに掲載する場合は費用が高くなる傾向があります。特に商品やサービスの世界観を丁寧に伝えたい場合に適しており、ブランディングの訴求やリードナーチャリングを重視したい場合におすすめです。アフィリエイト広告アフィリエイト広告は、ブログの運営者や企業のオウンドメディア、SNSのインフルエンサーなどに広告掲載を依頼する広告手法です。依頼先のメディアや投稿などにアフィリエイトリンクを掲載してもらい、ユーザーがあらかじめ設定したコンバージョンを達成することで費用が発生します。費用相場は1件あたり数百円〜数千円が一般的で、商材の単価や成約難易度によっては数万円単位になることも少なくありません。。無駄な支出を避けながら確実な成果を狙いたい企業に適しており、ECやサービス業など幅広い業種で活用されています。メルマガ広告メルマガ広告は、大手メディアが展開している既存のメールマガジンに掲載する広告のことを指します。配信単価は1通あたり2円〜10円程度が目安で、大手企業が持っているメールリストを転用できるのが強みです。費用が割安でターゲットが絞られているため、適切に活用すれば他の広告と比較しても費用対効果が高くなりますが、メールリストの顧客層が自社のターゲット層に被っていなかった場合は、求める成果が得られない可能性があります。キャンペーンや新商品告知など、短期的な反応を狙いたいケースに有効です。Web広告の費用を決めるポイントWeb広告の費用を決める際には、以下のような点を指標として算出するのがおすすめです。売上目標から決める損益分岐点から決めるCPAから決めるLTVから決めるCPOから決めるそれぞれ詳しく見ていきましょう。売上目標から決めるまずは売上目標から広告にかける費用を決める方法です。たとえば月商100万円を目指す場合、はじめに商品単価や購入率をもとに必要なコンバージョン数を算出します。そして、算出したコンバージョン数をもとに必要な広告のクリック数やCPA(顧客獲得単価)を参照すれば、売上目標を達成するために必要な広告費を算出することが可能です。比較的算出が簡単なのが特徴で、過不足ない広告費を設定できるのがメリットとなります。損益分岐点から決める続いては損益分岐点から広告費を決める方法です。損益分岐点を上限として広告費を設定すれば、広告費が原因で赤字になることを避けられます。まずは商品やサービスの単価から原価や固定費などを差し引き、粗利を算出します。続いて、粗利がマイナスにならないような金額で広告費の上限にすることで、損益分岐点を超えないように広告費を設定することが可能です。あらかじめ赤字にならないように費用を設定することになるため、リスクを抑えて運用できるのがメリットです。一方で、粗利が少ない商品では十分な広告費を確保できないこともあるため、別の設定方法を検討した方が成果につながる可能性があります。CPAから決める広告費はCPAを基準に設定することも可能です。CPA(顧客獲得単価)とは、1件のコンバージョンを獲得するのにかかった広告コストを指します。CPAを広告費の設定に活用する場合、限界CPAから目標CPAを算出することが重要です。限界CPAは、赤字にならない範囲内でコンバージョンを最大化できる基準のことで、一般的には以下のどちらかの計算式で算出されます。年間顧客単価 × 粗利率売上単価 - 原価 - 経費基本的には「売上単価 - 原価 - 経費」の方が、厳密に赤字にならない点を算出することが可能です。限界CPAから、残したい利益を差し引くことで、目標CPAを算出することが可能です。あとは目標CPAに目標のコンバージョン数を掛け合わせることで、広告費を算出できます。確実に求める利益が残る形で広告費が設定できるのが、CPAから広告費を設定するメリットです。LTVから決めるLTVからも広告費を設定することが可能です。LTV(顧客生涯価値)とは、1人の顧客が取引の終了までに自社にもたらす総利益を指し、主にサブスクリプション系のビジネスで利用されます。LTVから広告費を設定する場合は、過去の実績から平均LTVを算出し、残したい利益を差し引くことで具体的な金額を算出することが可能です。CPOから決める費用対効果を重視した広告運用を行うには、CPO(注文獲得単価)を基準に予算を決める方法が適しています。CPOは1件の注文を獲得するためにかかった広告コストのことです。CPAと異なり、確実に売上につながるために必要なコストが分かる指標で、広告費を注文数で割ることで算出できます。基本的にはCPAと同じく、限界CPOから目標をCPOを設定するのが一般的です。限界CPOは以下のいずれかの計算式で算出できます。限界CPO = 年間顧客単価 × 粗利率年間顧客単価 - (広告費以外の年間総コスト ÷ 総顧客数)より正確に赤字にならない数値を算出したいのであれば、「年間顧客単価 - (広告費以外の年間総コスト ÷ 総顧客数)」の方が確実です。そのうえで、限界CPOから残したい利益を差し引けば、目標CPOが算出できます。最後に目標のコンバージョン数を掛け合わせれば、広告費を算出することが可能です。Web広告の費用相場は料金体系や種類で変化するWeb広告の料金体系や各施策ごとの費用相場について解説してきました。本記事の要点をまとめると以下の通りです。Web広告は種類によって料金体系や費用相場が異なるWeb広告の予算を設定する際には、売上目標やCPAなど、1つの指標を基準にすることが重要Web広告の費用相場は各手法で採用されている料金体系によって大きく変化します。特にリスティング広告やディスプレイ広告など、クリックやインプレッションに応じて料金が発生するタイプのWeb広告では、CPAやCPOなどを基準に予算を設定していくことで、広告施策で赤字になるリスクを抑えられます。Web広告を活用する際は、それぞれの料金体系を正しく理解し、適切に予算を設定するようにしましょう。